グリスの種類と正しい塗布箇所

バイクの点検をする男性

バイク整備におけるグリスの役割

グリスの基本的な役割は、主に「潤滑」「防錆」「密閉」の3つです。
高圧や衝撃がかかる場所でも油膜を保ち、金属部品の摩耗を防ぐのが潤滑作用です。

また、水分や外気が金属表面に触れるのを防ぎ、錆びや腐食の発生を抑えます。
さらに、ベアリングなどの隙間を埋めて異物の侵入を防ぎ、密閉材としての機能も果たしてくれます。

グリスの種類と使い分けのポイント

グリスは、その特性によっていくつかの種類に分類され、使用箇所に応じて使い分ける必要があります。

万能性が高いリチウムグリス

リチウムグリスは、最も一般的で万能性の高いグリスです。
耐熱性や耐水性、機械的安定性などのバランスに優れており、アクスルシャフトやステアリングベアリング、スイングアームピボットなど、幅広い箇所に使用できます。

迷ったときに一つ持っておくと非常に便利な基本のグリスと言えます。

高負荷に強いモリブデングリス

モリブデングリスは、二硫化モリブデンという固体潤滑剤を添加したグリスです。
このモリブデンが、強い圧力がかかっても油膜が破れない「極圧性」を高めてくれます。

ミッション内部の軸受けや、スプラインシャフトなど、高い荷重がかかる摺動部分に最適です。

また、耐熱性にも優れており、マフラーの取り付けボルトやナットなどの高温になる部分に塗布することで、焼き付きや錆びによる固着を防ぐ効果も期待できます。

ゴム・プラスチックに使えるシリコングリス

シリコングリス(ラバーグリス)は、耐熱性や耐薬品性に優れており、ゴムやプラスチック部品の潤滑に特化しています。

他のグリスはゴムを劣化させる可能性がありますが、シリコングリスはこれらの素材を傷めません。

具体的な使用箇所としては、ブレーキキャリパーやマスターシリンダーのピストンシール、フロントフォークのオイルシールリップ部などが挙げられます。
ゴム部品の動きをスムーズにし、劣化を防ぐ上で欠かせないグリスです。

グリスを塗布すべき具体的な箇所と手順

グリスを塗布する際、特に重要なのがアクスルシャフトとベアリングです。
アクスルシャフトは、ホイールを固定する軸ですが、グリスアップを怠ると錆びてホイールから抜けなくなる「固着」を起こしやすくなります。

シャフトに薄く均一にリチウムグリスを塗布することで、防錆とスムーズな着脱が可能になります。

また、ホイールベアリングやステアリングベアリングにグリスを充填する際は、適量を守ることが重要です。

グリスガンを使って充填する際は、古いグリスをパーツクリーナーなどでしっかり除去してから新しいグリスを注入します。
グリスを入れすぎると抵抗となり、逆に動きを妨げる原因となります。

このとき、可動部にグリスがはみ出さないよう、薄く均一に塗り広げるのがコツです。パーツの性能を長く保てるよう、正しい手順でグリスを塗りましょう。